制作日誌84
- 紀彦 倉薗
- 11月23日
- 読了時間: 3分

本日は諸々待ちの日なので休日です。
ちょっと一筆取らせていただきます。
「生成AIによる漫画制作について」
ここ数日、Gemini3 のアップデートが X を騒がせています。コーディングも含めた生成能力がまた飛躍的に上昇したからです。僕も少し試してみましたが、以前は難しかった漫画のコマ割りも含めたイラスト制作が容易になっていました。まさに指数関数的な成長っぷり…。また、かなり近いうちにさらに飛躍的なバージョンアップが来ると考えれば、もはや漫画は AI を使えば誰でも簡単に一定のクオリティのものを作れるようになったと言えます。
おそらくこのツールを使って、今まで絵の描けなかった人たちが、頭の中にあった物語を漫画としてアウトプットしていく動きが一時的に広がると思います。ある意味「漫画制作の民主化」ですね。ただ、27 年この業界で漫画制作に携わってきた身として、この状況は AI が既存の漫画をすべて駆逐するという未来にはなかなかなり得ないと感じています。むしろ「AI を使ってある程度の漫画が描けるようになった」という、ある意味でのスタート地点です。
漫画家志望の人も同じで、誰しも最初は全く描けないところからスタートして、練習を重ねてプロと遜色ない原稿が描けるようになります。そこに到達する時間は素質と努力によってそれぞれですが、ある程度描けるようになってからは“ネーム制作”の壁が立ちはだかります。漫画は複雑怪奇な表現形式で、単に絵が描ければ成り立つメディアではありません。キャラクター、テーマ、演出、セリフ、コマ割りなど、他にも細かい箇所でセンスや技術が必要になります。
シナリオもコマ割りも演出も、ある程度はプロンプトワークでアウトプットできるようになるでしょう。しかし実際の連載会議や編集部での掲載判断、市場でヒットしたり重版がかかったりするかどうかは、「キャラクター性」や「読者のどんな欲求・抑圧を解放しているか」「既視感のないストーリーや構造を持っているか」などが決定的に重要になります。つまり、作り手が何を考え、世界の何に関心を持ち、何に価値を置き、どんな情念や情熱を漫画として伝えようとしているのか、楽しませようとしているのか――その人格と思考こそが漫画の核になるからです。
つまり、これまでのアナログ、デジタルという漫画の制作手法に AI 生成という作り方が一つ加わっただけで、どんなキャラクターが見れるのか、どんなストーリーが読めるのか、どんなテーマで考えさせてくれるのか、という漫画の役割そのものは何も変わらないと言えます。これから、アナログ、デジタル、AI の単独もしくは組み合わせた形で、これまでの綺羅星の如く輝いてきた漫画の名作たちと「面白さ」を競い合っていく時代が始まったのかなと思っています。
AI 制作は、シナリオもキャラデザも絵も少ない労力で出せる分、じゃあそれはどんな漫画だろう? ドラゴンボールやドラえもんや名探偵コナンやブラックジャックより面白いのかな? と世間は待ち構えているのではないでしょうか。
AI で作れるようになった、というだけでは逃れられない“比較の場”が待っている。そう感じています。それはこれまで同様、相変わらず僕自身にも突きつけられておりますが…汗。
でもそれもそんなに長い時間続くことではない気もします。新しい体験メディアが席巻していくまでの残された時間の話ですね。
長ったらしくなりましたが、皆さんはどう考えてらっしゃいますか?
それでは、良い日曜日を。また明日!




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